■画像補間法
多値画像(グレイ画像)やカラー画像を用いて、高精度な画像処理(回転、拡
大、変形等)を行う際に避けて通れないのが、画像補間法である。
たとえば上の黄と青の図形を左に回転させることを考えよう。
このような回転処理を施した画像を生成するには、回転後の画像のある画素が
回転前のどの画素に対応しているかを、全画素について計算すればよい。
たとえば上の説明図で、回転画像の点Aは原画上の点A'から、点Bは原画上
の点B'から、点Cは原画上の点C'から、その濃度値を取得すればよい。
ところで、点A'のように原画の画素のほぼ中心にくる場合は選択の余地はな
いが、点B'のように青画素と背景(白)画素との中間にくる場合や、点C'の
ように4つの画素の中間にくる場合は、どの画素の濃度値を取得すればよい
か迷ってしまう。この対応点の濃度値の取得方法として、以下の3つの手法
が知られている。
1)ニアレストネイバー法(nearest neighbor)
一般的に、回転後の画像のある画素に対応する、回転前の画像の画素の座標
は、整数値を取らず実数値を取る。よって最近傍の画素を選択し、この濃度
値を回転後の画像の対応画素に描き込む方法が、ニアレストネイバー法であ
る。ただし、90°、180°、270°のような90°毎以外の回転では、
±0.5画素未満の量子化誤差(実数を整数とみなしたことによる)を伴うた
め、エッジにはジャギー(ギザギザ)が発生する。
2)バイリニア法(bi-linear interpolation)
ニアレストネイバー法では最近傍の画素を選択したが、バイリニア法では周
囲の4つの画素の濃度値から、その座標(実数値)に応じて線形の濃度補間
(X,Y共に)を行う。
3)バイキュービック法(bi-cubic convolution)
バイリニア法よりも高精度で補間を行うために、周囲の16個の画素の濃度
値から、3次関数を用いて補間する(X,Y共に)。補間に用いる式は、
sin(πx)/πxで、理論(サンプリング定理)的には最も完全な濃度補間
式である。これをテイラー展開で3次の項で近似し、補間式として用いる。
ニアレストネイバー法 バイキュービック法
上にニアレストネイバー法とバイキュービック法による、画像回転の実施例
を示す。ニアレストネイバー法ではエッジにジャギーが発生しているが、バ
イキュービック法では起きていない。なお、バイリニア法でも、バイキュー
ビック法に近い画質が得られる。
なお画像補間法は、回転だけではなく、画像の拡大・縮小の際にも使われる。
下図は、原画中の白枠内の部分画像をニアレストネイバー法とバイキュービ
ック法を用いて、2.4倍に拡大した図である。バイキュービック法では拡大画
像に不自然さはないが、ニアレストネイバー法ではエッジにジャギーが発生
している。
原画
ニアレストネイバー法 バイキュービック法
(A1)これらの画像補間法は、2値画像では使えないのですか?
(Q1)ニアレストネイバー法のみ使えます。他の手法は使えません。
(A2)カラー画像でも使えますか?
(Q2)各R,G,B成分毎の濃度値に対して、適用します。
(A3)バイキュービック法はどのような場合に使いますか?
(Q3)実用的には、バイリニア法だけで問題ありません。ただ、画像
を大きく拡大する場合には、バイリニア法だとエッジ部(濃淡
の変化が大きいところ)で、ジャギー(ギザギザ)が発生しま
す。バイキュービック法だと、ほとんど気になりません。
(A4)バイキュービック法で用いる補間関数sin(πx)/πxは
何ですか?
(Q4)画像は、1画素を最小単位とする画素の集合です。もともと連
続した画像を画素単位のデータに変換することを標本化(サン
プリング)といいます。
連続画像の標本化は、連続画像と矩形関数(RECT関数)のたた
みこみ(コンボルージョン)によるものと考えることができ、
矩形関数のフーリエ変換がsinc(x)=sin(πx)/πxとな
ります。
標本化定理を使えば、標本化間隔をある空間周波数以上にと
れば、標本点から連続画像を完全に復元できます。この復元
はフーリエ逆変換によって行われるので、sinc(x)が係数
関数としてでてくるのです。
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